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テノヒラサイズは2008年の年末に、脚本・演出家オカモト國ヒコの呼びかけで結成されました。
所属メンバーは演劇歴10年を数える、関西演劇界の中堅といっていい7人の役者たち。

第一回公演は、オカモトへの依頼であった新劇場「ソープオペラ・クラシックス」(大阪・アメリカ村)の柿落とし公演として行われました。
新劇場のオープンという明るいニュースで関西のマスコミ・観客の注目を集めることが出来たのも幸いし、旗揚げ公演としては望外の大盛況で幕を閉じる事が出来ました。

「テノヒラサイズの人生大車輪」(作・演出 オカモト國ヒコ)は
この旗揚げ公演でテノヒラサイズの特徴である、「90分ぴったりの上演時間」、 「パイプ椅子を様々なモノに見立てての情景写」、「決して演技を崩さないままでの笑いの追及」、 「セットや衣装、照明・音響などのスタッフワークに頼らない姿勢」などのスタンスが完成しました。

テノヒラサイズの作品コンセプトは一言で言うなら、「引き算の発想」です。

例えば、第二回公演「テノヒラサイズの致命的な欠陥」(作・演出オカモト國ヒコ)は、折からのエコブームの影響で話題になりつつあった「素人農家」をテーマにしたミーティングコメディとして作られ、一回目で好評であった「パイプ椅子を様々なモノに見立てての情景描写」をあえて封印しています。

代わりに、舞台転換時の音楽を出演者が
その場で 「ボイスパーカッション」で行うという試みがなされました。
つまり、この作品では、音響による音楽を引き算したのです。

結果、「大自然に憧れて来たはいいが老人たちに嫌われ、村で孤立しミーティングしまくる若者たち」という
シチュエーションと相まって、笑いだけではない独特のムードの作品になりました。

コメディとしても、ミーティング風景の言葉の積み重ねだけでミーティングルームの外(つまり村全体)で起こってしまう
大クライマックスを表現するという挑戦をしています。

舞台では話してるだけなのに、観客の頭の中では笑える大スペクタクルが広がっていく、という難しい試みでしたが、毎回笑いのこない回はなく、自分たちの作るシンプルな舞台に、より一層自信を深める事が出来ました。
また、第一回のマスコミに助けられたと思われた観客動員を上回る結果となりました。

そして、この公演の一週間前に行われたイベントKiss-FM主催「アメリカ村芝居バトルフェスティバル」に
30分の新作短編「テノヒラサイズの天国と地獄」で参加。
お陰さまで優勝することが出来ました。作品は現在(2010年1月)インターネットでご覧になることができます。

このイベントで短編演劇という可能性に触れ、それは第三回公演である「一口サイズのテノヒラサイズ」に繋がっていきます。


短編演劇はしっかり作ればもっと面白く出来るのではないか?
第三回の短編オムニバス公演「一口サイズのテノヒラサイズ」(全作品 脚本・演出・構成 オカモト國ヒコ)はそんな発想から生まれました。

「シンプルイズベスト」のコンセプトはそのままに全く色の違う四本の30分短編を、回変わりで3本ずつ上演していくというスタイル。 

一回も同じ組み合わせがないという、自分たちをも混乱させる上演となりましたが、これは見る順番を変える事により、それぞれのストーリーの内容がある時にはリンクしたり、リンクしなかったりという面白さを狙ったもので観客には好評でした。  

また、シアトリカル應典院提携公演として初めて劇場を変えた公演でもあります。
この劇場での引き算は、「ステージを無くす」というもの。
観客と同じ高さの床から発信する地続きの芝居。間口は最大。さらに張り出し。
三方からの観客に見つめられるという、これまでのソープオペラの舞台が4つは入ってしまう広い空間で、実にのびのびと楽しく芝居が出来ました。

年末、しかも短編の公演ということで心配された観客動員も、前半こそ伸び悩みましたが
「短編なのに内容が濃い」
「泣くほど笑った」
などとご自身のブログに好意的な感想を書いて下さる観客が多くいらっしゃり、口コミ効果からか後半は一気に加速しました。

結成より一年、豪華なセットもなく、衣装も揃いのツナギを着ているだけという、
演技とストーリーと演出だけしかない舞台を支持してくれている観客がいます。

“テノヒラサイズ”という劇団名は

もう10年もやってるのに僕たちは舞台の上というテノヒラサイズくらいの小さな事しか出来ません。
でも、舞台の上なら宇宙の始まりだろうが終わりだろうが手作りで何だってやれますよ。」


という謙虚なのか不遜なのか分からない矛盾する心持でつけられたものです。

ウェルメイドなプレイを基本としつつも、
貪欲に「見立て」「一人数役」といった演劇独特のメソッド、
時には「ボイスパーカッション」のような異文化も取り込みながら、毎回様々な試行錯誤を重ねています。 

大阪人の集まりという劇団の性格上、笑いがないと不安になるという消極的理由から基本的にはコメディですが、
あまりジャンルにとらわれずテノヒラサイズ的演劇の道を広く長く模索していきたいと考えています。
 

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